
ファンコミュニティとはオンライン上で形成される特定の興味や愛着を持つ人が集まり、双方向コミュニケーションが図れる場のことです。
特徴は運営者である企業とファンのそれぞれが情報発信を通じて、参加者同士で継続的な交流をすることが可能であること。
企業がファンコミュニティを構築する目的は、顧客との関係を強化し、新規顧客の獲得や売上の増加など事業成長を図ることです。
SNSとは違い、双方向のコミュニケーションが取れることがファンコミュニティのメリットでもあります。
多くのメリットのある一方で運営の難しさや、長期的な視点での計画が必要となるのが課題です。
ファンコミュニティのメリットデメリットや成功事例、作り方や注意点などを解説していきます。
ファンコミュニティとは

ファンコミュニティとは、SNSやネット上で形成される特定の共通の興味や愛情を持つ人たちが集まり、情報交換や交流する集まりのことです。
専用アプリや独自のサイトなどを通じて、ファン同士の交流や企業とファンとの交流などが行われます。
企業がファンコミュニティを構築し運営する目的としては、
・ファンの声を企業が把握する
・ファンの満足度を高める
・企業イメージをアップさせる
といったことがあげられます。
ファンコミュニティは単なるSNSのフォロワーとは異なり、企業と顧客、顧客同士の関係を深め、ブランドの価値を高めることが目的です。そのため、双方向のコミュニケーションが重要となります。
例えば、Appleやナイキのようなブランドは、単に製品を売るだけでなく、ファンコミュニティを通じてブランドのストーリーを伝え、顧客が「ブランドの一部である」と感じられるような体験を提供しています。
このように、ファンコミュニティは単なる交流の場ではなく、企業にとって「ブランド価値の最大化」や「顧客のロイヤルティ向上」のための戦略的な資産となるのです。
ファンコミュニティの構築にはプラットフォームが必要
プラットフォームには以下の2種類があります。
- ・ファンコミュニティサービス
- ・ファンコミュニティサイト
ファンコミュニティサービスは、ファンコミュニティに特化したプラットフォームのこと。
アイドルやインフルエンサーなどが利用していることの多い、ファンコミュニティ専用のプラットフォームです。
ファンコミュニティの運営のための機能が整っているので、企業は運営会社に手数料を支払って利用します。
ファンなどの利用者が利用料を支払って交流するケースが多いですが、無料のものもあります。
リソースやノウハウが不足している場合は、こういったプラットフォームを利用し運営する企業も多いです。ただ、このようなプラットフォームはカスタマイズできる領域が狭いので、独自性を高めるためには実績豊富な開発会社に相談してください。
コミュニティサイトは、企業が開発した自社のファンコミュニティサイトのことです。
企業ごとのブランドに合わせて、ファンとの交流に必要な機能が備えられています。
プラットフォームを利用しないため手数料が発生せず、無料でファンが利用できるものが多いです。
ファン同士が交流できるコンテンツやモニター調査など、様々な機能をカスタマイズして構築しています。
ファンコミュニティとSNSの違い

ファンコミュニティとSNSの最も大きな違いは「熱量」と「エンゲージメントの深さ」にあります。ファンコミュニティのほうが熱量があり、双方向コミュニケーションが取れることです。SNSは拡散力が強く、ファン以外の人にも気軽にリーチが可能です。
SNSの特性
- ・情報の拡散力が高い
- ・新規顧客との接点を作るのに有効
- ・企業側の一方的な発信が中心になりがち
ファンコミュニティの特性
- ・既存の顧客のロイヤルティ向上に寄与
- ・ファン同士の交流を促進
- ・企業とファンの関係性が深まり、長期的なエンゲージメントを生む
SNSは新規顧客へのリーチには向いているものの、コミュニティ形成には向いていません。
一方で、ファンコミュニティは、すでにブランドに共感している顧客との関係を深め、長期的なブランド価値を高める場として機能します。
そのため、企業は「SNSで新規顧客を獲得し、ファンコミュニティでロイヤルカスタマーを育てる」という戦略を取ることで、マーケティング効果を最大化できるのです。
ファンコミュニティのメリット
企業がファンコミュニティを作るメリットは以下があげられます。
・ロイヤルティの向上
・インサイトの収集
・新規顧客の集客
・競争力の強化
・問題解決のサポート
ファンコミュニティの構築は、企業の競争力を高め、顧客ロイヤルティの向上や新規顧客の獲得につながる重要な施策です。
なぜなら、ファンコミュニティはブランドに共感する顧客同士が交流し、企業と双方向の関係を築くことで、長期的なエンゲージメントを強化できるからです。
|顧客ロイヤルティの向上
ファンコミュニティを通じて、企業とファンとの関係が深められ、ロイヤルティが向上することが期待できます。
コミュニティに参加していることで、ファンが特別感を持ち顧客満足度が向上するからです。
企業との対話が深められたり、ファン同士で交流することで企業に対する親しみや信頼感が高まるでしょう。
例えば、スターバックスの「スターバックス®リワード」では、会員限定の特典や先行情報を提供することで、エンゲージメントを高めています。
顧客とのエンゲージメントが強化され、リピート利用が増える傾向があります。
|顧客インサイトの収集
ファンコミュニティからファンのインサイト(率直な意見)を取り入れ、商品やサービスの開発や改善に活かすことができます。
なぜなら、コミュニティは単なるアンケートやデータ分析では得られない、「顧客が本当に求めているもの」が見えてくるからです。
ユーザー同士の交流や投稿を分析することで、本音や興味をリアルタイムで知ることができ、何が求められているかを把握することが可能です。
ユーザーの関心や市場のトレンドを把握できるので、競合よりも早く対応できる可能性もあります。
例えば、カゴメの「&KAGOME」は、ファンの声を商品開発に反映させることで、リピート率の向上に成功しました。
コミュニティでの積極的な意見交換により、よりニーズに沿った商品やサービスの開発が可能になるでしょう。
|UGCによる新規顧客の集客
ファンコミュニティのメンバーは新規顧客を呼び込んでくれる可能性もあります。
なぜなら、コミュニティは口コミに代表されるようなユーザー生成コンテンツ(UGC)を生み出す場として機能するからです。
コミュニティでファン同士が交流し共感する中で生まれる口コミは、他のユーザーの信頼を得ることにつながります。
企業が発信する広告よりも、他のユーザーの口コミを信頼するというユーザーは増加しています。
リアルで信頼できる情報として他のユーザーが認識すれば、商品やサービスの利用につながるかもしれません。
ファンが口コミをSNSでシェアすることで、ブランドの認知度が広がることも期待できます。
|競争力の強化
ファンコミュニティによって、顧客のロイヤルティが高められれば競合との競争力を強化することができます。
これは、ファンと密接なつながりは独自の強みとなり、他との差別化ができるからです。
商品やブランドに愛着を持ったファンは、他の企業の商品やサービスに流れにくくなります。
多少の料金の変動は、ファンの愛着に影響はしません。
結果として安定した売り上げにつながり、LTVの向上につながります。
|問題解決のサポート
ファンコミュニティは、商品やサービスに関する問題解決のサポートにも貢献します。
これは、他のユーザーとのやり取りから疑問が解決したり、質問に対して他のユーザーが答えてくれたりするからです。
- ・コミュニティ内でFAQを作成する
- ・ファン同士での質疑応答
などにより、企業の問題解決についてのサポートの負担を軽減することができるでしょう。
ファンコミュニティのデメリット
企業がファンコミュニティを運営することにはメリットが多くありますが、デメリットも存在します。
・ネガティブな口コミの公開
・少数の偏った意見
・管理の難しさ
ファンコミュニティは企業に多くのメリットをもたらしますが、一方で適切に運営しなければ、ブランドにとってリスクとなる可能性もあります。
ネガティブな口コミの公開によりブランドイメージが損なわれたり、一部の偏った意見が企業の戦略に影響を与えることもあります。
また、運営には継続的な管理が求められ、不適切な投稿やトラブル対応、コミュニティの活性化を維持するための労力が必要です。
迅速な対応が必要です。
|ネガティブな口コミの公開
ファンコミュニティはオープンな場なので、悪い口コミやクレームも公開されてしまいます。ネガティブな口コミが拡散されるリスクも。
ブランドイメージの低下にもつながり、ファンの不満や失望が増える可能性があります。否定的な口コミが広がる前に、迅速に適切な対応をする必要があります。
|少数の偏った意見
偏った意見が企業の戦略に影響を与えるリスクを考慮する必要があります。
コミュニティに参加しているユーザーは、様々な興味や嗜好を持っているからです。
活発に発信するファンの意見が、全体のニーズを反映しているわけではないことを認識しておく必要があります。
|管理の難しさ
管理の難しさもデメリットといえるでしょう。活発なコミュニティの運営には時間と労力が必要だからです。
ファンの期待に応えるコンテンツの提供だけでなく、不適切なコンテンツやトラブルの原因となる投稿などを管理する必要があります。
個人情報の漏洩の対策も不可欠です。専任の管理者が適切にモデレーションを行うことや、セキュリティ対策が重要です。
そもそもファンコミュニティは、一度作ったら終わりではなく、継続的な運営が求められます。
適切なコンテンツを提供し、顧客とのコミュニケーションを維持するためには、専任の担当者を配置することが望ましいでしょう。
ファンコミュニティの作り方
ファンコミュニティの作り方を解説します。
ファンコミュニティを成功させるには、明確な目的を定め、適切なターゲットを設定し、継続的に価値を提供できる場を構築することが重要です。
①ファンコミュニティの目的を決める
②集めるファンを想定する
③プラットフォームを選定する
④コンテンツ作成・企画設計
⑤コミュニティの参加者を募る
ファンコミュニティの目的やターゲットを決めることから始めましょう。
目的・参加者のペルソナを設定することで、方向性が定まり効果的なアプローチやコンテンツの計画が進められます。
目的やターゲットが決まったらプラットフォームを選定します。
- ・アプリケーション
- ・ファンコミュニティをサポートするプラットフォーム
- ・ウェブサイト
など、ターゲットに合わせて使いやすくアクセスしやすいプラットフォームを選びましょう。
ファンコミュニティを活性化させるためには、コンテンツの作成やイベントの企画が重要です。FAQや掲示板などだけでなく、ユーザーが自分から発信できる仕組みがあると参加意欲が高まります。
参加する楽しみがわからないと、離脱しやすくなるのでわかりやすい説明動画などがあると良いでしょう。
ファンコミュニティへの参加を募るのは、企業への愛着の強いユーザーに絞ることが重要です。
ファン同士のトラブルを防ぎ円滑なコミュニティ運営のために、初めからユーザーをある程度限定することをおすすめします。
ファンコミュニティの運営の注意点

ファンコミュニティを運営する上での注意点を確認しておきましょう。
・良質なファンを集める
・コミュニティで売り込みをしない
・ファンの声を反映する
・専任の担当者を置く
・長期的な企画を立てる
|良質なファンを集める
ファンコミュニティの立ち上げには良質なファンを集めることが重要です。
商品やサービスに愛着のあるファンは、コミュニティを盛り上げ多くのファンを引き寄せてくれるからです。
自主的に投稿や発信を積極的に行い、後からのユーザーが参加しやすい雰囲気を作りだします。活発に活動して盛り上がっているコミュニティを作り出すために、愛着のある良質なファンが必要です。
|コミュニティで売り込みをしない
ファンコミュニティでは売り込みをしないことが重要です。なぜなら、ファンコミュニティは企業とファンとの信頼を築く場所だからです。
売り込みをされると、ファンがコミュニティから逃げてしまう可能性があります。
コミュニティの中で売り込むのではなく、参加しているファンの口コミを通じて新規顧客の獲得を目指すことが重要です。
|ファンの声を反映する
ファンコミュニティで得られたファンの声を、商品やサービスに反映させると良いでしょう。ファンは自分たちの声が尊重されたと感じると、ロイヤルティが高まるからです。
それによって熱心なファンとなり、長期的な関係が実現する可能性があります。
ファンのサポートは競合との差別化につながります。
|専任の担当者を置く
ファンコミュニティには専任の担当者が必要です。ファンがコミュニティに定着し活性化するためには、専任の担当者の関わりが重要だからです。
コミュニティの運営やファンとのコミュニケーションなど、迅速に適切な対応が求められます。
コミュニケーションとマーケティングのスキルや専門知識が必要となるので、プロの制作会社へ依頼することも検討しましょう。
|長期的な企画を立てる
ファンコミュニティの運営には長期的な視点が求められます。すぐに業績アップやブランディングに成功するわけではないからです。
コミュニティでの活動がすぐに目に見える成果につながらないと、焦りを感じるかもしれません。
ですが、ファンコミュニティでロイヤルティが高められた結果、インサイトの収集や新規顧客の獲得につながるのには年単位の時間がかかるケースが多いです。
どんなコンテンツを提供しロイヤルティを高めるか、長期的な計画を立てることが重要です。
ファンコミュニティの成功事例
ファンコミュニティ施策で成功した企業の事例を紹介します。
・カゴメ株式会社「&KAGOME」
・アテニア株式会社「Attenirファンコミュニティ」
・森永製菓株式会社『エンゼルPLUS』
・サッポロビール株式会社「ヱビスビアタウン」
|カゴメ株式会社「&KAGOME」
画像引用:カゴメ株式会社「&KAGOME」
業績が落ち込んでいるときの施策として、ファンコミュニティの企画を開始。
会員募集キャンペーンは開設時に行わず、個人株主と通販購入者のみに限定。
最初からコアなファンだけが参加する施策を実施し、カゴメへの愛着を深めるコンテンツを提供していきました。
カゴメのコミュニティメンバーは一般の消費者に比べ、はるかに購入額が高くカゴメの売り上げを支えています。
|アテニア株式会社「Attenirファンコミュニティ」
画像引用:アテニア株式会社「Attenirファンコミュニティ」
アテニアはファンコミュニティの活用で2度、低迷期を抜けることに成功しています。
売り上げが落ち込んでいた時、ファンコミュニティの意見を活用。
ファンのリアルな本音を分析し、企業目線では気づけない商品価値や魅力を発見します。
販売手法やプロモーションにファンの意見を取り入れたことや、コミュニティを通じたファン同士の交流が売り上げの促進にもつながったと考えられています。
|森永製菓株式会社『エンゼルPLUS』
画像引用:森永製菓株式会社『エンゼルPLUS』
エンゼルPLUS[の会員になると、森永製菓の商品の写真やコメントを投稿することができます。
ファンが掲示板を立てることができ、ファン同士で質問したりレシピの公開などで盛り上がります。
運営からの質問に対してファンが投票したり、森永の商品に関するクイズに答えたり、ファンが楽しめるコンテンツが充実しています。
|サッポロビール株式会社「ヱビスビアタウン」
エビスビアタウンは開設から半年で会員数が7万人以上になりました。
ビールに関する話題だけでなく、自由に気軽に投稿してコミュニケーションが取れる場が提供されています。
ファン同士だけでなく、運営側ともオープンなコミュニケーションが活発で、ファンとの共同開発も人気です。
参加しているファンの本当の声を聞ける場所として機能しています。
まとめ
ファンコミュニティは、単なる「ファンの集まり」ではなく、事業成長のためにブランドの価値を高め、競争優位性を確立するための重要なマーケティング戦略です。
ファンコミュニティを成功させるためには、目的の明確化、適切なターゲット設定、使いやすいプラットフォームの選定、魅力的なコンテンツ設計、そして効果的な参加者募集が不可欠です。
特に、ユーザーが自発的に交流したくなる仕掛けを整えることが、コミュニティの活性化と継続的な成長につながります。
管理の難しさや、長期的な視点を持って取り組むことが課題となりますが、ファンコミュニティは企業の抱える問題の解決につながるかもしれません。
ファンコミュニティの構築や運営での課題は、プロの制作会社に相談してみましょう。
企画や運用などにおける適切なサポートが期待できます。